相続の話を親と切り出せないまま、時間だけが過ぎている——そんな方は少なくありません。何から話せばよいのか、どこまで聞いてよいのかが分からないためです。
結論からお伝えすると、最初に話しておきたいのは「財産の場所」「遺言の意向」「家族の想い」の3項目です。金額や遺言の中身まで踏み込む必要はなく、「どこに何があるか」「どこに保管してあるか」「いまどう思っているか」を共有できるだけで、いざというときに家族が迷わずに済みます。家族が自然に顔を合わせるお盆などの帰省は、この話を始めるよい機会です。
財産の「場所」を把握する|金額ではなく、ありか
最初の項目は財産の場所です。細かい金額ではなく「どこに何があるか」をざっくり把握できるだけで、いざというとき家族が大きく助かります。
- 預貯金:使っている銀行・支店名(通帳・キャッシュカードの保管場所)
- 保険:生命保険・医療保険の証券の保管場所・契約している保険会社
- 不動産:自宅・実家・賃貸物件の権利証(登記識別情報通知)の保管場所
- 有価証券:株式・投資信託の口座(証券会社)
- 借入・ローン:住宅ローンの残高・連帯保証の有無
- デジタル資産:ネット銀行・ネット証券・暗号資産・サブスク
「全部の通帳を見せて」ではなく、「もしものとき、どこを開ければいい?」と聞くと、親も身構えずに話しやすくなります。中身まで聞く必要はなく、ありかがわかるだけで十分です。
遺言の「意向」を確認する|保管場所と方式だけでよい
ふたつ目は遺言です。書く予定があるか、書いてあるなら保管場所はどこか、自筆か公正証書かという方式を確認しておきます。内容は聞かなくて構いません。
- 自筆証書遺言:自分で書く方式。手軽ですが形式に不備があると無効になることがあります。法務局保管制度(2020年7月開始)を使うと紛失・改ざんを防げ、家庭裁判所の検認も不要になります
- 公正証書遺言:公証役場で公証人に作成してもらう方式。形式の不備がほぼなく検認も不要。費用はかかりますが確実性が高い方式です
「遺言は書いた?」とストレートに聞きにくければ、「最近、法務局で遺言を預かってくれる制度ができたらしいね」と話題を切り出すと自然です。
家族の「想い」を共有する
みっつ目は、お金や書類ではなく想いの話です。次のようなテーマを、「いまどう思ってる?」という聞き方で少しずつ共有していきます。
- 介護:誰にどこまで世話してほしいか・施設は望むか
- 延命治療:意識がない状況になったとき、どこまでの治療を希望するか
- 葬儀:規模・宗派・家族葬の希望
- お墓:先祖代々の墓を継ぐか・永代供養・樹木葬など
- 形見分け:思い入れのある物を誰に渡したいか
親の気持ちが変わることも当然あります。一度きりの話にせず、少しずつ更新していくのが理想です。子世代の希望や考えもあわせて素直に伝えると、対話になります。
話したあとはA4紙1枚にまとめて保管する
聞いた内容は、難しいフォーマットを使わず、A4紙1枚に「銀行・保険・不動産・遺言の保管場所」をまとめれば十分です。子世代の連絡先・かかりつけ医・税理士や弁護士の連絡先も同じ紙に書き、置き場所(仏壇の引き出し・金庫など)を家族で共有しておきます。エンディングノートを活用する方法もありますが、まずはA4紙1枚から始めるのがハードルが低い方法です。
まとめ|話せたこと自体が家族の安心につながる
- 財産の場所:通帳・保険・権利証・株式・デジタル資産の「ありか」を把握する
- 遺言の意向:書く予定・保管場所・方式を確認する
- 家族の想い:介護・葬儀・お墓・延命治療の希望を共有する
すべてを一度に決める必要はありません。帰省を入口に、少しずつ話していくくらいの気持ちで十分です。牧野会計では、相続・事業承継のご相談のなかで、相続税のシミュレーションや遺言書のサポート、弁護士・司法書士のご紹介にも対応しています。話し始めるきっかけがほしい方は、無料初回面談をご利用ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する税務・法務アドバイスではありません。記載内容は2026年6月時点の情報・制度にもとづきます。