「掛金が損金になる」と聞いて倒産防止共済(経営セーフティ共済)への加入を検討している方、すでに加入していて解約時期を迷っている方に向けて、加入前に知っておきたい注意点を整理します。
結論からお伝えすると、倒産防止共済には「40か月未満の解約は元本割れ」「解約手当金は全額益金」「令和6年改正で再加入後2年は損金不算入」という3つの落とし穴があり、加入前の出口設計が欠かせません。出口とセットで使えば事業の安定と節税の両方に役立ちますが、出口を考えずに入るとメリットを取り損ねることがあります。
倒産防止共済とは|連鎖倒産を防ぐための制度
倒産防止共済(正式名称:中小企業倒産防止共済制度、通称「経営セーフティ共済」)は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する共済制度です。本来の目的は取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐことで、月額5,000円〜20万円の掛金を払い込むと、取引先が倒産した場合に無担保・無保証人で掛金総額の最大10倍(上限8,000万円)までの貸付が受けられます。掛金は損金(個人事業主は必要経費)に算入できるため節税策として知られていますが、使い方を誤ると思わぬ損につながります。
落とし穴① 40か月未満の解約は元本割れになる
解約手当金の支給率は、掛金納付月数に応じて段階的に決まります。任意解約の場合の支給率は次のとおりです。
- 掛金納付月数1〜11か月:0%(戻ってこない)
- 12〜23か月:80%
- 24〜29か月:85%
- 30〜35か月:90%
- 36〜39か月:95%
- 40か月以上:100%(掛金全額が戻る)
12か月未満で解約するとゼロ円になる点が最大の注意点です。機構解約(12か月以上の滞納など)やみなし解約(個人事業主の死亡・法人の解散等)の場合は別の支給率になります。「いつ解約できるか」を加入時点で大まかに想定しておくことが安全です。
落とし穴② 解約手当金は全額が益金になる
解約時にもらえる解約手当金は、法人なら全額が益金算入、個人事業主なら事業所得の総収入金額に算入されます。加入中は掛金が損金になって利益が圧縮されますが、解約時にはその分が収入として戻ってくる。つまり倒産防止共済は、その年の損金を将来の益金に付け替える「課税の繰り延べ」の性格を持ちます。好業績の年に何も考えずに解約すると、大きな益金がその年に乗り、かえって多くの税金を払うことになりかねません。
出口を考えるべき典型シーン
- 赤字見込みの期に解約する(益金を赤字と相殺)
- 大型設備投資の期に解約する(減価償却・特別償却と相殺)
- 役員退職金を支給する期に解約する(多額の損金と相殺)
- 業績悪化で資金繰りが必要な期(解約手当金が運転資金として活きる)
落とし穴③ 再加入後2年は損金不算入(令和6年改正)
令和6年10月1日以後に解約した場合、その解約の日から再度加入した日以後2年を経過する日までに支出する掛金は、損金または必要経費に算入できなくなりました。「解約→益金→再加入→また損金」をくり返す節税ループ的な使い方が広がったため、これを封じる改正です。
- 利益調整目的で数年ごとに解約と再加入をくり返してきた事業者
- 一度解約してすぐ入り直すつもりでいた方
- 法人成りや事業承継のタイミングでいったん解約して再加入を考えている方
こうしたケースは影響を受けやすいため、「ちょっと解約して、また入り直そう」が以前ほど気軽にできなくなった点を押さえておきましょう。
安全な使い方は「出口設計をしてから加入する」
- 赤字見込みの期や大型支出のある期と解約年をそろえ、益金と損金を相殺する
- 役員退職金の支給年と合わせる
- 本来の目的(連鎖倒産への備え)と節税効果のバランスを見る
- 40か月以上の納付計画を立て、途中解約のリスクを下げる
- いったん解約したらすぐ入り直すつもりで設計しない(2年ルール)
加入のタイミング・解約のタイミング・掛金月額の設定は、事業の業績見通し・退職金支給時期・設備投資計画などと総合的に考えるテーマです。牧野会計では、経営支援のなかで業績見通しとあわせた出口設計を支援しています。加入や解約のタイミングを迷っている方は、無料初回面談で自社の数字と出口イメージを一度整理してみてください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する税務アドバイスではありません。記載内容は2026年6月時点の制度・税制にもとづきます。